畜産業の仕事とは?
年収・なり方から「キツい」
と言われる理由まで徹底解説!
私たちが毎日口にする美味しいお肉、新鮮な牛乳、栄養満点の卵。
その「食」の根幹を支え
私たちの命を育んでくれているのが「畜産業」の仕事です。
「大自然の中で、動物たちと触れ合いながら働く」
そんな、のどかで穏やかなイメージを持つ方もいるかもしれません。
しかし、その裏側には365日休みなく命と向き合うという
計り知れない責任と常に変化する自然や経済状況と戦う
厳しい現実が存在します。
この記事では、そんな畜産業という仕事のリアルを徹底的に解剖します。
具体的な仕事内容は?
家畜の種類で大きく異なる
畜産業の仕事は、単に「動物の世話をする」だけではありません。
科学的な知識と深い愛情をもって、家畜を健康に育て
安全な食品として社会に送り出すまでがそのミッションです。
仕事内容は、育てる家畜の種類によって大きく異なります。
• 酪農(らくのう):乳牛を育てる
牛乳や乳製品の元となる生乳を生産する仕事です。
• 搾乳(さくにゅう)
1日2回、朝と夕方の決まった時間に牛の乳を搾ります。
これが毎日の基本サイクルです。
• 給餌(きゅうじ)・清掃
牛の健康状態に合わせてエサを与え
牛舎を常に清潔に保ちます。
• 健康・繁殖管理
獣医師と連携し、牛の病気を予防したり
人工授精によって新しい命を繋いだりします。
• 肉用牛経営:肉牛を育てる
牛肉を生産する仕事で、「繁殖」と「肥育」に分かれます。
• 繁殖農家
母牛を飼育し、仔牛を産ませて、一定期間育てます。
• 肥育農家
繁殖農家から買った仔牛を数年間かけて肉付きが良く
質の高い肉牛になるよう育て上げ、出荷します。
• 養豚(ようとん)・養鶏(ようけい)
豚肉や鶏肉、鶏卵を生産する仕事です。
• 給餌・清掃
数千、数万という数の豚や鶏に自動給餌器などでエサを与え
豚舎・鶏舎を清潔に保ちます。
• 環境管理
豚や鶏は非常にデリケートなため
温度・湿度・換気を徹底的に管理します。
• 衛生・防疫管理
鳥インフルエンザなどの家畜伝染病を防ぐため
外部からのウイルス侵入を許さない、厳格な衛生管理を行います。
畜産業で働くには?
必要な資格は?
A. 未経験からでも挑戦可能です。
ただし安全かつ効率的に作業を行う上で
必要となる資格は多数あります。
畜産業への就職に、学歴や特定の職歴は問われません。
しかし、トラクターやトラックの運転、専門的な作業を行うために
以下の資格が求められたり入社後に取得を推奨されたりします。
【事実上、必要となる資格・スキル】
• 普通自動車免許(MT推奨)
軽トラックの運転は必須です。
多くの軽トラはマニュアル車(MT)のため
MT免許が望ましいです。
• 大型特殊免許・けん引免許
大型のトラクターや飼料を運ぶトレーラーなどを
公道で運転するために必要です。
• 家畜人工授精師(国家資格)
繁殖管理の専門家としてキャリアアップに繋がります。
• 獣医師(国家資格)
言わずもがな家畜の健康管理における最強の資格です。
【未経験から始めるには?】
全国の自治体やJA(農協)では新規就農者向けの研修制度が充実しています。
まずは農業法人などに従業員として就職し
働きながら実践的な技術を学ぶのが一般的です。
気になる給料・年収事情
畜産業の収入は経営規模や家畜の種類
そしてその年の飼料価格や市場価格によって大きく変動します。
• 雇用されている場合(従業員):年収300万円~500万円
まずは、農業法人などで従業員として働く場合
このくらいの年収が一般的です。
経験や役職に応じて昇給していきます。
• 独立・経営者の場合:年収1,000万円以上も可能だが…
自分で牧場などを経営する場合
成功すれば年収1,000万円を超える高収入を得ることも夢ではありません。
しかし、その裏側には数千万円、時には億単位の初期投資や
飼料価格の高騰、家畜の病気による全滅といった
全てを失う可能性のある大きな経営リスクが常に伴います。
仕事のやりがいと大変なこと・厳しさ
• やりがい
• 「命」を育て、「食」を支えるという究極の使命感
自分の仕事が人々の食卓を彩り健康な体を作っている。
その社会貢献性の高さは何物にも代えがたい誇りです。
• 動物の成長と、命の誕生に立ち会える感動
生まれたばかりの小さな命が自分の手で
日に日に大きく成長していく姿や
新しい命が誕生する瞬間に立ち会える喜びは、この仕事ならではのものです。
• 大自然の中で、自分の采配で働ける自由さ
自然のサイクルと共に生き経営者として
自分の判断で道を切り拓いていける醍醐味があります。
• 大変なこと・厳しいこと・危険なこと
• 365日、休みがない現実
生き物に「お休み」はありません。
台風の日もお正月も毎日欠かさずエサやりや健康チェックが必要です。
• 過酷な肉体労働と臭いの問題
重い飼料の運搬や、糞尿の処理といった肉体労働は日常です。
また、動物特有の臭いは覚悟が必要です。
• 常に伴う、家畜伝染病のリスク
鳥インフルエンザや豚熱(CSF)といった伝染病が発生すれば
丹精込めて育てた家畜を全て殺処分しなければならない可能性があります。
• 精神的な負担
愛情を注いで育てた家畜を、食肉として出荷する際の心の葛藤。
そして、病気や事故で命を落としてしまった時の無力感と向き合う
精神的なタフさが求められます。
あなたはどっち?
畜産業に向いている人・向いていない人
【向いている人の特徴】
• 何よりもまず、動物が好きで、命に対して真摯に向き合える人
• 体力に自信があり、早起きが苦にならない人
• 観察力に優れ、動物の小さな変化に気づける人
• 地道な作業を、コツコツと続けられる忍耐力がある人
• 経営的な視点を持ち、変化に柔軟に対応できる人
【向いていない人の特徴】
• 動物が苦手、または「可愛い」という側面しか見られない人
• 体力に自信がない人
• 汚れることや、臭いに極端に敏感な人
• 安定したカレンダー通りの休日を望む人
• 命のサイクル(生と死)に向き合う覚悟がない人
動物たちを丹精込めて育てる
畜産業は単なる「動物のお世話」ではありません。
それは科学的な知識と深い愛情、そして何よりも
「命を預かる」という強い覚悟をもって
私たちの食生活の根幹を支える、極めて尊い仕事です。
その道は決して楽なものではなく常に自然や経済の荒波
という厳しい現実と向き合わなければなりません。
しかし、それを乗り越えた先には自らの手で「命」を育み
人々の「いただきます」に繋がっているという
何物にも代えがたい揺るぎない誇りが待っています。
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