米農家の仕事とは?
年収・なり方から「キツい」
と言われる理由まで徹底解説!
炊き立ての白いご飯の香り、一粒一粒に詰まった甘み。
私たち日本人の食生活の中心にある「お米」。
その、当たり前のようで、かけがえのない「美味しい」を
日本の美しい田園風景の中で育んでいるのが「米農家」です。
「自然の中で、自分のペースで働きたい」
「日本の食文化を支える仕事がしたい」
そんな想いを抱く人にとって非常に魅力的な選択肢のひとつです。
しかし、その穏やかなイメージの裏には
自然という大きな存在と向き合う厳しさや
経営者としてのシビアな現実が存在します。
この記事では、そんな米農家という仕事のリアルを徹底的に解剖します。
具体的な仕事内容は?
一年をかけた壮大な物語
米農家の仕事は、私たちが田植えや稲刈りの光景から
想像する以上に一年を通して続く緻密で計画的な作業の連続です。
それはまるで、一編の壮大な物語のようです。
• 【冬~春:準備期】土と命を育む(1月~4月)
• 土づくり
前年の稲わらや堆肥をすき込み稲が元気に育つための
栄養満点の「ベッド」を作ります。
美味しいお米は、健康な土から生まれます。
• 種もみ選び・苗づくり
塩水に種もみを浮かべて良い種だけを選別し
苗箱で小さな芽を育てます。
この「苗半作(なえはんさく)」と言われる時期の管理が
その年の収穫を大きく左右します。
• 【春~夏:育成期】水と光のシンフォニー(5月~8月)
• 代(しろ)かき・田植え
田んぼに水を張り、土をトロトロになるまで
丁寧にかき混ぜ、いよいよ田植えです。
機械を使っても隅々まで美しく植えるには熟練の技が必要です。
• 水の管理・草刈り
稲の成長に合わせて、田んぼの水の量をミリ単位で調整します。
稲の栄養を奪う雑草との戦いもこの時期の重要な仕事です。
• 【秋:収穫期】黄金色のクライマックス(9月~10月)
• 稲刈り
一年間の努力が実り、黄金色に輝く稲穂をコンバインで刈り取ります。
農家にとって最も喜びに満ちた瞬間です。
• 乾燥・もみすり
刈り取ったお米を適切な水分量まで乾燥させ
もみ殻を取り除いて玄米にします。
この一手間がお米の味と保存性を決めます。
• 【収穫後】次なる物語への序章(11月~12月)
• 出荷・販売
袋詰めし、JAや米穀店
あるいは個人のお客様へ出荷します。
• 機械のメンテナンス・経営分析
活躍してくれたトラクターやコンバインを整備し
今年の収支を分析して来年の作付け計画を練ります。
米農家になるには?
必要な資格は?
A. 農業を始めるために
法律で定められた必須の資格や学歴は
一切ありません。
しかし、農作業を安全かつ効率的に行う上で事実上
必要となる資格やスキルは多数あります。
【事実上、必要となる資格・スキル】
• 普通自動車免許(MT推奨)
軽トラックの運転は必須です。多くの軽トラはマニュアル車(MT)のため、MT免許が望ましいです。
• 大型特殊免許・けん引免許
大型のトラクターやコンバインを公道で運転するために必要となります。
• 農業機械の操作スキル
田植え機やコンバインなど、高価な機械を扱う技術。
【未経験から始めるには?】
全国の自治体やJA(農協)では
新規就農者向けの研修制度や支援金制度(経営開始資金など)が充実しています。
まずは農業法人などに従業員として就職し
働きながら実践的な技術を学ぶのが一般的です。
気になる給料・年収事情
米農家の収入は「経営規模」と「その年の収穫量・米価」
によって大きく変動します。
• 全体の平均所得:約200万円~600万円
これはあくまで目安です。
多くの農家は他の仕事と兼業しながら生計を立てています。
• 経営規模による収入の違い
水田作経営の農業所得は経営面積が大きくなるほど高くなります。
• 15ha以上:平均667万円
• 30ha以上:平均1,000万円超
台風などの自然災害で収穫量が激減したり
市場の米価が下落したりすれば
収入が大きく落ち込むリスクと常に隣り合わせです。
一方で大規模化や付加価値の高いブランド米の生産
スマート農業(ドローンやセンサー活用)によるコスト削減などで
高収入を実現している経営者も数多く存在します。
仕事のやりがいと大変なこと・厳しさ
• やりがい
• 「食」という、生命の根幹を支える誇り
自分の育てたお米が日本中の食卓に並び
人々の笑顔と健康を支えている。
その社会貢献性の高さは、何物にも代えがたいものです。
• 収穫の喜び
一年間、丹精込めて育てた稲が黄金色に実り
収穫を迎えた時の達成感は格別です。
• 「美味しい」という最高の褒め言葉
購入してくれたお客様から「今年のお米も、本当に美味しいね」
と直接言われた時の喜びが、次への活力になります。
• 大変なこと・厳しいこと
• 自然相手の、予測不可能な現実
どんなに努力しても、台風、猛暑、冷害、病害虫の発生といった
人間の力ではどうにもならない要因で
一年間の苦労が水の泡になることがあります。
• 過酷な肉体労働
夏の炎天下での草刈りや重い米袋の運搬など
強靭な体力が必要です。腰痛は職業病とも言えます。
• 365日、気が抜けない
生き物である稲の成長に「休日」はありません。
毎日田んぼの様子を見に行くなど
常に稲のことを気にかける必要があります。
• 高齢化と後継者不足
日本の米農家は深刻な高齢化と後継者不足に直面しており
地域の田んぼをどう維持していくかという大きな課題があります。
あなたはどっち?
米農家に向いている人・向いていない人
【向いている人の特徴】
• 何よりもまず、自然や植物が好きで、土に触れることが苦にならない人
• 地道な作業を、コツコツと続けられる忍耐力がある人
• 体力に自信があり、体を動かすことが好きな人
• 物事を長期的視点で考え、計画的に行動できる人
• 機械いじりが好きな人、経営的な視点を持つ人
【向いていない人の特徴】
• 虫が極端に苦手な人
• 体力に自信がない人
• 短期的な結果を求める人
• 安定した収入や、カレンダー通りの休日を望む人
• 計画通りに進まないと、パニックになる人
1年通して完成する長い長い仕事
米農家は単に「お米を作る」だけの仕事ではありません。
それは科学的な知識と長年の経験
そして何よりも自然への深い敬意をもって日本の食文化の魂を育む
極めて尊く、そして奥深い仕事です。
その道は決して楽なものではなく
常に自然の厳しさと向き合わなければなりません。
しかし、それを乗り越えた先には
自らの手で「日本の食」を支えているという
何物にも代えがたい揺るぎない誇りが待っています。
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