海女の仕事とは?
年収・なり方から、その知られざる
「キツい」現実まで徹底解説!
紺碧の海へ命綱一本、己の呼吸だけを頼りに潜っていく。
アワビやサザエ、ウニといった海の宝物を
古来より伝わる「素潜り漁」で採る、海の女たち「海女(あま)」。
その姿は日本の原風景の一部であり
自然と共生する力強くも美しい生き様そのものです。
「海が好き」
「自然の中で働きたい」
そんな想いを抱く人にとって、究極の仕事のひとつかもしれません。
しかし、その浪漫あふれるイメージの裏には
常に危険と隣り合わせの厳しい自然との対峙と
担い手不足という、日本の伝統文化が直面する現実が存在します。
この記事では、そんな海女という仕事のリアルを徹底的に解剖します。
具体的な仕事内容は?
海に潜るだけではない!
海女の仕事は、単に「海に潜って、貝を採る」だけではありません。
海と共に生き、海の恵みを未来へ繋ぐための様々な役割を担っています。
1. 素潜り漁
これが海女の最も中核となる仕事です。
• 準備
その日の天候や潮の流れを読み、漁に出るかどうかを判断します。
• 潜水(1回の潜水は50秒前後)
磯着(いそぎ)と呼ばれる伝統的な白い着衣
あるいはウェットスーツを身にまとい、腰に重りをつけ
一気に水深5〜10メートルの海底へ。
カギノミやイソノミといった専用の道具を使い
岩に張り付いたアワビなどを巧みに剥がし取ります。
• 浮上と休息
採った獲物を網袋や樽に入れ、海面に浮上。
磯笛(いそぶえ)と呼ばれる独特の呼吸法で息を整え
これを1日に何十回と繰り返します。
2. 陸上での仕事
海から上がっても、仕事は終わりではありません。
• 選別・出荷
採ってきた獲物を大きさごとに選別し、漁協の市場へ出荷します。
• 加工作業
採れたての海藻を天日干しにしたり、ウニを瓶詰めにしたり
といった加工作業も自分たちで行います。
3. 海を守る仕事
海女は、海の恵みを頂くだけでなく
「海を守る」という重要な役割も担っています。
• 資源管理
採ってよいアワビの大きさや、漁のできる時間を厳格に定め
乱獲を防ぎ、海の資源が枯渇しないよう守っています。
• 海岸清掃
台風の後など、浜に打ち上げられたゴミを清掃するのも
海女たちの大切な仕事です。
海女になるには?
必要な資格は?
A. 法律で定められた必須の資格や免許は
一切ありません。
しかし、誰でもすぐになれるわけではなく
その地域社会に根ざした独特の「しきたり」と「信頼関係」の中で
一人前の海女として認められていく道が一般的です。
【海女になるための一般的なルート】
1. 漁協への加入・師匠探し
その地域で海女漁を行っている漁業協同組合(漁協)に相談し
受け入れてくれる「師匠」となる
ベテラン海女さんを見つけることから始まります。
近年では「地域おこし協力隊」などの制度を活用して
移住者を受け入れている地域もあります。
2. 見習い期間
最初は浅瀬での海藻採りから始め少しずつ潜る技術や
獲物の見つけ方、潮の流れの読み方などを
師匠の背中を見ながら体で覚えていきます。
何よりも「その土地で、海と共に生きていく」という強い覚悟と
地域のコミュニティに溶け込むためのコミュニケーション能力が求められます。
気になる給料・年収事情
海女の収入は、完全な「成果主義(獲れ高次第)」であり
その日の漁獲量によって収入がゼロの日もあれば
大きく稼げる日もある、非常に不安定な世界です。
• 全体の平均年収:約150万円~300万円
これはあくまで目安です。
多くの海女さんは、農業や民宿、飲食店など
他の仕事と兼業しながら生計を立てています。
• 収入の仕組み
アワビなどの高価な海産物を多く採ることができれば
収入は大きく跳ね上がります。
ベテランの中には漁期である数ヶ月間だけで
数百万、時には1,000万円近く稼ぐ人もいます。
しかし、その裏側にはアワビの減少といった資源の問題や
天候不良で漁に出られない日が続くリスクが常に存在します。
仕事のやりがいと大変なこと・危険性
• やりがい
• 大自然との一体感と、獲物を見つけた時の興奮
自分の知識と経験、そして勘だけを頼りに海の宝物を見つけ出し
手にした時の喜びは何物にも代えがたいものです。
• 「生きている」という強烈な実感
息を止め、静寂の海中でただ目の前の獲物と向き合う。
その極限の集中状態は、日常では決して味わえない
生きていることへの感謝と充実感を与えてくれます。
• 日本の伝統文化を、自らの体で継承する誇り
何百年、何千年と受け継がれてきた自然と共生する漁法を
次の世代へと繋いでいくという大きな使命感があります。
• 大変なこと・厳しいこと・危険なこと
• 常に危険と隣り合わせ
サメや危険生物との遭遇、急な潮の流れに巻き込まれる
浮上できなくなる、といった常に生命の危険が伴います。
• 過酷な肉体労働
冷たい水温や強い水圧に耐えながら
長時間体を動かし続けるため、強靭な体力は必須です。
• 後継者不足と、資源の減少
仕事の厳しさから、なり手が減り続けていること。
そして、海の環境変化によりアワビなどの
資源そのものが減少しているという大きな課題に直面しています。
あなたはどっち?
海女に向いている人・向いていない人
【向いている人の特徴】
• 何よりもまず、海が好きな人
• 体力に自信があり、泳ぎや潜水が得意な人
• 自然への敬意を持ち、その厳しさを受け入れられる人
• 地域社会に溶け込み、人付き合いを大切にできる人
• 精神的にタフで、孤独を恐れない人
【向いていない人の特徴】
• 体力に自信がない、または泳ぎが苦手な人
• 安定した収入や、決まった休日を望む人
• 厳しい上下関係や、地域のしきたりが苦手な人
• 一人で黙々と作業するのが苦手な人
• ただ「稼ぎたい」という気持ちだけで、海への敬意がない人
自然と共生する力強くも美しい生き様
海女は、単なる「漁師」の一種ではありません。
それは自然のサイクルに寄り添い、海の恵みに感謝し
その資源を未来へと繋いできた
日本の伝統文化そのものを体現する生き方です。
その道は決して楽なものではなく
常に危険と隣り合わせの厳しい世界です。
しかし、それを乗り越えた者だけが手にすることができる
大自然との一体感と自らの手で生きるという
揺るぎない誇りがあります。
他の仕事も見てみる→Check

