彫刻家の仕事とは?
年収・なり方から「キツい・危険」
と言われる現実まで徹底解説!
木、石、粘土、金属…。
あらゆる素材と対話し、自らの肉体と技術を駆使して
二次元(平面)では表現し得ない
三次元(立体)の作品を生み出す芸術家、「彫刻家」。
それは絵画とはまた違う
重力や空間そのものに挑む、力強いロマンに満ちた仕事です。
しかし、その作家性の裏には、体力、財力、
そして時には危険さえも伴う、厳しい現実が存在します。
この記事は[芸能・芸術の職業大全]の一部として
そんな「彫刻家」という仕事のリアルを
その収入源から厳しい現実
そして何物にも代えがたいやりがいまで、徹底的に解剖します。
彫刻家になるには?
必要な資格は?
A. 法律で定められた必須の国家資格や学歴は
一切ありません。
究極的には、あなたの作品が「アート」として認められ
それを購入する人がいれば、あなたはプロの彫刻家です。
【しかし、最も一般的な道は存在する】
• 美術大学・専門学校への進学
これが最も王道のルートです。
彫刻家は、デッサン力や造形理論だけでなく
素材の化学的知識(石の割り方、金属の溶接、樹脂の硬化など)や
専門的な道具(ノミ、溶接機、グラインダーなど)
の扱い方を学ぶ必要があります。
美大は、その技術、理論
そして制作に没頭する「時間」と「場所(アトリエ)」
を得るための事実上のスタートラインです。
• 「資格」より「実績」と「人脈」
美大を卒業した後は、「資格」ではなく
①教授や同窓生との人脈(ギャラリー紹介などに繋がる)
②コンクール(公募展)での受賞歴
③自分の作品集(ポートフォリオ)
が、あなたの実力を証明するすべてとなります。
具体的な仕事内容は?
「創る」と「売る」
彫刻家の仕事は
アトリエにこもって「作品を創る」ことだけでは成立しません。
それは「①制作活動」と
「②発表・販売活動」の両輪で成り立っています。
1. 制作活動
これが彫刻家の核となる仕事です。
• 技法(素材)による分類
• 彫刻(カービング)
木や石といった塊を
ノミやチェーンソーなどで「彫り進めて」形にする。
• 塑造(モデリング)
粘土やロウといった柔らかい素材を「盛りつけて」形にする。
ブロンズ像などは、これで作った原型を型取りして作られます。
• 構成(コンストラクション)
金属の溶接や、様々な素材を組み合わせて(アッサンブラージュ)
立体物を構築します。
• 構想と制作
テーマを練り、デッサンを重ね、素材と向き合い
時には数ヶ月、数年という時間をかけてひとつの作品を完成させます。
2. 発表・販売活動
作品は人に見られ、購入されて初めて「仕事」となります。
• ギャラリー(画廊)での発表
自身の作品を取り扱ってくれるギャラリーと契約し
個展やグループ展を開催します。
• コンクール(公募展)への出品
権威あるコンクールに出品し
入選・受賞することで、自身の評価と知名度を高めます。
• コミッションワーク(注文制作)
自治体からの依頼で
公共のモニュメント(公園の銅像など)を制作したり
個人から肖像(胸像など)の制作を依頼されたりします。
気になる給料・年収事情
この問いに答えるのは
画家や俳優の年収を語るのと同じくらい困難です。
なぜなら、収入は「ゼロから数億円」まで
天と地ほどの差があるからです。
「彫刻家として
作品販売だけで生活できている人はほんの一握り」
これが、まず知るべき厳しい現実です。
• 収入源の例
• 作品の販売収益
ギャラリーで作品が売れた場合
その売上の一部(一般的に50%前後)が画家の収入となります。
• コミッションワークの報酬
• コンクールの賞金
• 【最重要】講師・兼業
多くの彫刻家が、生計を立てるために
「美術大学の教授・講師」「美術予備校の講師」
あるいは「絵画教室の運営」を兼業しています。
• 年収の目安
若手時代は、制作活動と並行して
アルバイトで生活費を稼ぐのが一般的です。
「年収」という概念を持つこと自体が難しい場合も少なくありません。
【最大の問題:コスト】
画家と比べても、彫刻家は圧倒的に経費がかかります。
• 材料費
石や木材、ブロンズ(鋳造費)は非常に高価です。
• アトリエ代
大きな作品を置くスペース
音や埃(ほこり)を出しても問題ない場所(=家賃が高い)が必要です。
• 設備費
溶接機、クレーン、窯、研磨機など
専門的な設備投資も必要です。
仕事のやりがいと大変なこと・危険性
やりがい
究極の「物質(マテリアル)」との対話
• 「手」で、実体のあるモノを生み出せる
絵画と違い、彫刻は「そこにある」という
圧倒的な存在感(マチエール)を持ちます。
自分の手で、触れられる「物質」を生み出す喜びは
何物にも代えがたいものです。
• 空間そのものを支配する達成感
作品がひとつ置かれるだけで、その場の空気
空間そのものが変わります。
• 時代を超える「遺産」になる
石やブロンズといった素材は
数百年、数千年と残る可能性があります。
自分の作品が未来への遺産となるかもしれない
壮大なロマンがあります。
大変なこと・厳しいこと・危険なこと
• 1. 経済的な不安定さ
前述の通り、収入が不安定な上にコストが非常にかかる。
これが最大の厳しさです。
• 2. 過酷な「肉体労働」
これが画家との決定的な違いです。
重い石や木材を運び、ノミを打ち、チェーンソーを振り回す。
制作活動そのものがアスリート並みの体力勝負です。
腰痛は職業病とも言えます。
• 3. 常に伴う「危険」
• 道具による危険
チェーンソー、グラインダー(研磨機)、溶接機、鋭利なノミなど
一瞬の気の緩みが大怪我に繋がる道具を日常的に扱います。
• 素材による危険
重い石材の落下による圧迫事故のリスク。
• 環境による危険
石や木の粉塵(ふんじん)を
吸い込むことによる塵肺(じんぱい)のリスク。
樹脂や薬品(ブロンズの着色など)による化学物質中毒のリスク。
あなたはどっち?
彫刻家に向いている人・向いていない人
【向いている人の特徴】
• 何よりもまず、「物質(マテリアル)」そのものへの愛と探求心がある人
• 強靭な体力と、精神的なタフさ(忍耐力)を持つ人
• 優れた「空間把握能力」(3Dで物事を考える力)を持つ人
• 孤独を愛し、長期間一つのことに没頭できる人
• 怪我や汚れを恐れない、覚悟のある人
【向いていない人の特徴】
• 安定した収入や、決まった休日を望む人
• 体力に自信がない人、潔癖症の人
• 地道な作業や、力仕事が嫌いな人
• 短期間で結果を求めてしまう人
• 平面的な思考(絵を描くこと)は得意だが
立体的に考えるのが苦手な人
重力や空間そのものに挑む
力強いロマンに満ちた仕事
彫刻家は単なる「アーティスト」ではありません。それは、
自らの哲学を表現する「思想家」であり
素材と対話する「職人」であり、そして
重機や薬品さえも扱う「技術者」でもあります。
その道は、経済的にも、肉体的にも
数ある芸術の道の中で最も過酷なもののひとつかもしれません。
しかし「自分の手でこの世界に触れられる『何か』を遺したい」という
燃えるような情熱を抑えきれない人にとって
それこそが、人生を懸けるに値する唯一無二の生き方なのです。
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