漫画家の仕事とは?
年収・なり方から
「週刊連載」の過酷な現実まで徹底解説!
『ONE PIECE』、『鬼滅の刃』、『ドラゴンボール』…。
世界中の人々の心を揺さぶり、時には人生観さえも変えてしまう
日本が世界に誇る文化「漫画」。
その「絵」と「物語」を
たった1人(と数人のアシスタント)の情熱で生み出す創造主
それが「漫画家」です。
「自分の作品で、一攫千金を掴みたい」
「自分の物語で、誰かを感動させたい」
この記事は、[芸能・芸術の職業大全]の一部として
そんな「漫画家」という仕事のリアルを
その収入源から、常に隣り合わせの「締め切り」という恐怖
そして何物にも代えがたいやりがいまで、徹底的に解剖します。
漫画家になるには?必要な資格は?
A. 法律で定められた必須の国家資格や免許は
一切ありません。
究極的には、あなたの漫画が「面白い」と認められ
出版社が「連載」を決め
読者が「購入」してくれれば、あなたはプロの漫画家です。
【プロになるための主なルート】
1. 新人賞への応募
出版社が主催する新人漫画賞に応募し、受賞することで
担当編集者がつきデビューへの道が開けます。
2. 出版社への「持ち込み」
完成原稿を、編集部に直接持ち込み
実力を見てもらう方法です。
3. アシスタントから昇格
プロの漫画家のアシスタントとして働きながら技術を学び
その人脈からデビューを目指します。
4. SNS・Web漫画からのスカウト
X(旧Twitter)やpixiv、ジャンプルーキー!
などで発表した作品が人気を集め
編集者から声がかかるケースも、近年非常に増えています。
「絵が上手い」だけではなれません。
読者の心を掴む「物語(ネーム)を作る力」こそが
プロになるための絶対条件です。
具体的な仕事内容は?
「作品」という名の製造業
漫画家の仕事はアトリエで優雅にペンを走らせることではありません。
特に「週刊連載」ともなれば
それは締め切りに追われる、過酷な「製造業」です。
• 1. 打ち合わせ
担当編集者と、次の話の展開(プロット)を議論します。
ここで、物語の方向性が決まります。
• 2. ネーム(Name)
これが、漫画制作で最も重要かつ、最も苦しい工程です。
コマ割り、構図、台詞、キャラクターの動きを全て決める
漫画の「設計図」を作ります。
ここで「面白さ」の9割が決まると言われ
編集者から何度も「ボツ(没)」=描き直しを命じられます。
• 3. 下書き・ペン入れ
ネームがOKになったら、原稿用紙(またはデジタル)に
鉛筆で下書きをし、Gペンや丸ペンといった専門のペンで
本番の線(ペン入れ)を描いていきます。
• 4. 仕上げ
• 背景
キャラクター以外の背景を描き込みます。
• ベタ・トーン
髪の毛などを黒く塗りつぶし(ベタ)
服の柄や影などを専用のシート(スクリーントーン)を貼って表現します。
(現在は、これらの作業の多くを
アシスタントが分業で行ったり、デジタルで処理したりします)
• 5. 入稿
完成した原稿を、編集部に渡します(データ送信または手渡し)。
そして、息つく暇もなく、次の1話目の「打ち合わせ」が始まります。
気になる給料・年収事情
この問いに答えるのは、最も困難です。
なぜなら、収入は「ほぼゼロから数十億円」まで
天と地以上の差があるからです。
• 収入源の例
1. 原稿料(げんこうりょう)
雑誌に掲載された時に支払われる、1ページあたりの報酬。
新人の場合、1ページ1万円前後が相場です。
週刊連載(20ページ)なら、月80万円ほどになりますが…
2. アシスタント料(支出)
原稿料から漫画家が自ら
アシスタントの給料(月数十万円~百万円以上)を支払わなければなりません。
つまり原稿料だけでは、ほぼ間違いなく赤字です。
3. 印税(いんぜい)
これこそが、漫画家の「夢」です。
単行本(コミックス)が売れた時に
その売上の約8%~10%が印税として入ってきます。
単行本が売れなければ、漫画家は生活できません。
4. 二次利用料
アニメ化、映画化、ゲーム化、グッズ化された際の権利使用料。
【収入の目安】
• 新人・若手
年収 ほぼゼロ ~ 300万円
単行本が売れず、原稿料だけではアシスタント代を払うので精一杯。
多くの人が貯金を切り崩すかアルバイトをしながら執筆しています。
「連載を持っている=お金持ち」では、決してありません。
• 中堅(単行本がコンスタントに売れる)
年収600万円~2,000万円
単行本の印税が、安定した収入源となります。
• トップクラス(国民的ヒット)
年収 数億円~数十億円
印税と、アニメ化などの二次利用料で
想像を絶する収入を得ることができます。
仕事のやりがいと大変なこと・厳しさ
やりがい
究極の「創造主」
• 自分の「物語」が、世に出る喜び
自分の頭の中にしかなかった物語が
「作品」として形になり、日本中、世界中の人々に読んでもらえる。
この創造主としての喜びは、何物にも代えがたいものです。
• 読者からのダイレクトな反応
「この台詞に泣きました」「〇〇(キャラ名)が大好きです!」
といった、ファンからの熱い反応が
日々の地獄のような作業を支える、最大の活力になります。
• 自分の作品が「文化」として残る
自分が生み出した作品が、世代を超えて読み継がれ
人々の記憶に残り続ける壮大なロマンがあります。
大変なこと・厳しいこと・危険なこと
• 1. 終わりなき「締め切り」という地獄
これが最大の厳しさです。特に週刊連載は
「週に一度、必ず20ページを完成させ、入稿する」
というサイクルが、何年も続きます。
体調不良も、スランプも、言い訳になりません。
• 2. 「人気アンケート」という名の審判
読者からの人気アンケートの結果が
作品の「面白い/面白くない」を判断する指標となります。
人気がなければ、容赦なく「打ち切り(連載終了)」を宣告されます。
• 3. 孤独な戦いと「生みの苦しみ」
「面白いネームが、どうしても思いつかない」
という、スランプとの戦い。
それを、基本的にはたった1人で乗り越えなければなりません。
• 4. 職業病という「危険」
物理的な危険はありませんが、健康面でのリスクが非常に高い仕事です。
• 睡眠不足
締め切り前は、徹夜が数日続くことも常態化します。
• 腱鞘炎(けんしょうえん)
ペンを握り続けることによる、手首の故障。
• 腰痛・眼精疲労
一日中、同じ姿勢で机に向かい続けることによる、身体の崩壊。
あなたはどっち?
漫画家に向いている人・向いていない人
【向いている人の特徴】
• 何よりもまず、「絵を描くこと」と
「物語を考えること」が、両方とも死ぬほど好きな人
• 精神的・肉体的に極めてタフで
絶対に締め切りを守るという責任感を持つ人
• 読者のニーズを読み取り
編集者の批判(ダメ出し)を素直に受け入れ、改善できる人
• 孤独を愛し、長期間1つのことに没頭できる人
【向いていない人の特徴】
• 安定した収入や、カレンダー通りの休日(特に睡眠時間)を望む人
• 「絵は好きだが、物語を考えるのは苦手」(またはその逆)な人
• 人からの批判(ダメ出し)に、ひどく落ち込んでしまう人
• 地道な作業(背景、トーン貼りなど)が嫌いな人
• 「自分の好きなものだけ」を描きたい人
(プロは、読者のニーズに応える仕事)
情熱で生み出す創造主
漫画家は、単なる「絵が上手い人」ではありません。
それは、読者の心を掴む「演出家」であり
物語を紡ぐ「脚本家」であり
そして何より毎週の締め切りという戦場を生き抜く「戦士」です。
その道は、99%の苦労と、1%の歓喜でできている
と言っても過言ではありません。
しかし、その1%の歓喜すなわち「自分の作品で、誰かの心を動かせた」
という瞬間の喜びが、他の全てを凌駕するほどの魅力を持っているからこそ
今日も多くの人が、その険しいペン先の世界を目指し続けているのです。
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