仕事

絵本作家

絵本作家の仕事とは?
年収・なり方から「食べていけない」厳しい現実と
最高のやりがいまで徹底解説!

 

ベッドでの読み聞かせ、図書館での出会い
キラキラした目でページをめくる子どもの姿。

「絵本」は、多くの人にとって
人生で最初に出会う「物語」であり「芸術」です。

「自分の絵と物語で、子どもたちの心に残る一冊を作りたい」
「世代を超えて読み継がれるような、“一生の宝物”を届けたい」

この記事は、[芸能・芸術の職業大全]の一部として
そんな「絵本作家」という、夢とロマンに満ちた仕事のリアルを
その収入源から厳しい現実
そして何物にも代えがたいやりがいまで、徹底的に解剖します。

 

絵本作家になるには?
必要な資格は?

A. 法律で定められた必須の国家資格や免許は
一切ありません。

究極的には、あなたの「絵」と「物語」が一体となった作品が
出版社や読者に「面白い」と認められれば
あなたはプロの絵本作家です。

【「資格」より「ダミー(ラフ絵本)」が全て】

絵本作家の世界で、あなたの名刺代わりとなるのは
「資格」ではなく「ダミー(ラフ絵本)」です。

ダミーとは、実際の絵本と同じページ数(通常32ページ)・構成で
ラフな絵と文章を配置した
「絵本の設計図」とも言える手作りの見本のこと。

プロの絵本作家は、このダミーの完成度で勝負します。

【プロになるための主なルート】

1. 新人賞への応募

出版社が主催する絵本新人賞に応募し、受賞することで
担当編集者がつき、デビューへの道が開けます。

2. 出版社への「持ち込み」

完成させた「ダミー」を、編集部に直接持ち込み
実力を見てもらう方法です。

3. SNS・Webからのスカウト

X(旧Twitter)やpixivなどで発表した作品が人気を集め
編集者から声がかかるケースも、近年増えています。

「絵が上手い」だけではなれません。
「絵」と「物語」が互いに語り合い
「ページをめくる」という仕掛けを最大限に活かした
総合的な「演出力」こそが求められます。

平成を彩った絵本作家たち

 

具体的な仕事内容は?
「絵」と「物語」の演出家

絵本作家の仕事は、「①物語作家(文)」と
「②画家(絵)」の2つの役割を
一冊の本の中で同時に行うことです。
(※もちろん、文と絵で分業するケースも多くあります)

1. アイデア出し・構想

「何を伝えたいか」「どんな主人公にするか」という
物語の「核」を練り上げます。

2. 物語・テキスト作成

絵本は、子どもが「耳」で聞いても分かりやすい
リズム感のある短い文章(テキスト)が命です。
絵が語るべき部分を計算し、あえて文章を削ぎ落としていく作業です。

3. ダミー(ラフ絵本)制作

これが絵本制作で最も重要かつ最も苦しい工程です。

32ページの限られた中で
どの場面でページをめくらせるか(めくりの効果)
見開きでどう見せるか、文字と絵のバランスはどうするかを
何十回も描き直し、設計図を完成させます。

4. 編集者との打ち合わせ

完成したダミーをもとに、担当編集者と議論を重ねます。
「もっとこうした方が面白い」
「この展開は伝わりにくい」といった厳しい意見を受け
ダミーをブラッシュアップしていきます。
ここでOKが出るまで、数ヶ月、時には数年かかることもあります。

5. 原画制作

編集者のOKが出たダミーをもとに
ようやく本番の「原画」を描き始めます。
水彩、アクリル、色鉛筆、デジタルなど、技法は作家によって様々です。

 

気になる給料・年収事情

この問いに答えるのは、最も困難です。
なぜなら、収入は「ほぼゼロから数千万円」まで
天と地以上の差があるからです。

「絵本作家として、専業で生活できている人は
ほんの一握り」

これが、まず知るべき厳しい現実です。

収入源の核:「印税(いんぜい)」

絵本作家の主な収入は、単行本が売れた時に支払われる印税です。
一般的に本の定価の7%~10%と言われています。

【収入のシミュレーション】

• 1冊1,500円の絵本、印税8%と仮定。

• 1冊売れるごとに、作家の収入は 120円 です。

• 初版5,000部がすべて売れた場合:120円 × 5,000部 = 60万円

この「60万円」を生み出すために
ダミー制作から原画完成まで
1年~2年を費やすことも珍しくありません。

その他の収入源

• 原画の販売(個展などで)

• 講演会の謝礼

• イラストレーターとしての仕事(挿絵など)

• (大ヒットした場合)グッズ化などの二次利用料

結論として、多くの絵本作家は「絵本作家」以外の仕事
(イラストレーター、デザイナー、美術講師、アルバイトなど)
と兼業
しながら
生計を立て、創作活動を続けています。

 

仕事のやりがいと大変なこと・厳しさ

やりがい

世代を超える「一生の宝物」

自分の作品が「文化」として残る

これが最大のやりがいです。
面白い絵本は、流行に関係なく何十年と読み継がれます。
自分が生み出した作品が親から子へ、子から孫へと
受け継がれる「文化」になる可能性があるのです。

子どもの「原体験」になれる

その子が人生で最初に出会う「感動」や「恐怖」、「優しさ」を
自分の作品で届けられる。
その責任感と喜びは、何物にも代えがたいものです。

読者(子ども・親)からの純粋な反応

「この本が大好きで、ボロボロになるまで読んでいます」
という手紙や、読み聞かせで目を輝かせる子どもの姿が
全ての苦労を吹き飛ばします。

大変なこと・厳しいこと・危険なこと

1. 圧倒的な経済的不安

前述の通り、これが最大の厳しさです。
「本が出ても、重版がかからなければ
(=売れなければ)、次の仕事はない」

というシビアな現実と、常に隣り合わせです。

2. 終わりなき「生みの苦しみ」

「シンプルで、深く、新しい」物語と絵を
ゼロから生み出すプレッシャーは想像を絶します。

3. 孤独な戦い

ダミー制作から原画完成まで、アトリエでたった1人
自分と向き合い続ける、精神的なタフさが求められます。

4. 職業病という「危険」

物理的な危険はありませんが
健康面でのリスク(腱鞘炎、腰痛、眼精疲労)
漫画家やイラストレーターと共通です。

 

あなたはどっち?
絵本作家に向いている人・向いていない人

【向いている人の特徴】

何よりもまず、「絵」と「物語」の両方が、死ぬほど好きな人

子どもが何を考え、何に笑い、何に怯えるのかに
深い洞察や興味がある人

精神的に極めてタフで、孤独な作業を続けられる「忍耐力」を持つ人

自分の作品が売れなくても、描き続ける覚悟がある人

「ページをめくる」という仕掛けに、興奮を覚える人

【向いていない人の特徴】

• 安定した収入や、カレンダー通りの休日を望む人

「絵は好きだが、物語を考えるのは苦手」(またはその逆)な人

人からの批判(編集者のダメ出し)に、ひどく落ち込んでしまう人

すぐに結果(成功)を求めてしまう人

ただ「可愛い絵」を描きたいだけで、物語の「構成」に興味がない人

 

絵本は人生で最初に出会う「物語」であり「芸術」

絵本作家は、単なる「絵が上手い人」ではありません。
それは、子どもの魂に届く「物語」を紡ぐ詩人であり
32ページで世界を構築する演出家であり
そして何より、売れなくても描き続ける覚悟を持った孤高の表現者です。

その道は、経済的には、数ある芸術の道の中で最も厳しいものの1つかもしれません。しかし、「自分の生み出した一冊が、誰かの一生の宝物になる」という、他の何にも代えがたい、壮大なロマンとやりがいに満ちた仕事です。

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ABOUT ME
aki
akiです。過去の交通事故で夢を諦め、人生の挫折から多くを学びこれからの人生をより豊かに生きるため日々精進しております。 調べることが大好きでわからないこと知りたいことがあればとにかく調べるやってみる!好奇心が絶えません!