アニメーターの仕事とは?
年収・なり方から「キツい」「低賃金」
と言われる過酷な現実まで徹底解説!
『呪術廻戦』の息をのむ戦闘シーン
『鬼滅の刃』の圧巻の作画。
私たちが熱狂する日本のアニメは、彼ら「アニメーター」の情熱と
ペン先から生み出される「絵」によって支えられています。
「好きなアニメに関わりたい」
「自分の絵で、キャラクターを動かしたい」
この記事は、[芸能・芸術の職業大全]の一部として
そんな「アニメーター」という
世界に誇る「Japanimation」の心臓部を担う仕事のリアルを
その収入源から常に隣り合わせの「締め切り」
そして「キツい」と言われる過酷な現実まで、徹底的に解剖します。
アニメーターになるには?
必要な資格は?
A. 法律で定められた必須の国家資格や免許は
一切ありません。
究極的には、あなたの「絵」が「商品」として通用すれば
あなたはプロのアニメーターです。
【「資格」より「デッサン力」と
「ポートフォリオ」が全て】
プロとして活動するためには
まずアニメ制作会社に就職する必要があります。
その際に問われるのは資格ではなく、あなたの「画力」そのもの。
• デッサン力
物体を立体的に、正確に捉える
すべての絵の基礎となる力。
• ポートフォリオ(作品集)
自分が描いたデッサンや、キャラクターの模写
オリジナルのイラストなどをまとめたファイル。
これが、あなたの「履歴書」となります。
【プロになるための主なルート】
1. 美術大学・専門学校で学ぶ
美大やアニメーター養成の専門学校で
デッサンや作画の基礎技術を徹底的に学びます。
2. アニメ制作会社に就職
ポートフォリオを携え
制作会社の採用試験(実技・面接)を受け
合格すれば「新人アニメーター」としてのキャリアがスタートします。
具体的な仕事内容は?
過酷な「動画マン」からのスタート
アニメーターの仕事は、そのキャリアパスによって
大きく役割が異なります。
1. 動画(どうが)
これが、新人アニメーターの最初の仕事です。
「原画(げんが)」と呼ばれる
動きの「キー(鍵)」となる絵と絵の間を
滑らかに動くように「中割り(なかわり)」の絵で埋めていく、地道な作業です。
• (例) 「パンチを振りかぶる絵」と
「パンチが当たりきった絵」の間に
10枚の「パンチを繰り出している途中の絵」を
ズレなく正確に描いていきます。
これは、アニメの品質を左右する
非常に重要な工程ですが
最も過酷で、最も報酬が低いポジションです。
2. 原画(げんが)
「動画」で数年間の経験を積むと、「原画マン」に昇格できます。
• 監督や演出家の指示に基づき
そのカットの「動きの設計図(キーとなる絵)」を描きます。
• キャラクターにどう動いてほしいか
どんな表情をさせたいかという「演技」を
絵で表現する、クリエイティブな仕事です。
3. 作画監督(さくがかんとく)
「作監(さっかん)」とも呼ばれます。
• 複数の原画マンが描いた「原画」をチェックし
絵柄(キャラクターの顔など)が
作品全体で統一されるように修正する、チーフアニメーターです。
• 高い画力と、作品への深い理解が求められます。
気になる給料・年収事情
「アニメーターは好きじゃないと
絶対にできない」
そう言われる最大の理由が、この収入事情です。
【収入の仕組み:完全出来高制】
多くの新人アニメーターは、正社員ではなく
「業務委託(フリーランス)」であり
給料は「出来高制(1枚描いて、いくら)」です。
• 動画マンの報酬:1枚 約200円~400円
• 週刊連載のアニメは、クオリティ(線の多さ)よりもスピードが求められ、単価が安い傾向にあります。
• 劇場版アニメは、高いクオリティが求められるため、単価が高い傾向にあります。
【収入の目安】
• 新人・若手(動画マン)
年収 100万円~250万円
これが、この仕事の最大の「厳しさ」です。
1日10時間以上働き、月に500枚描いたとしても
月収は10万円~20万円。
そこから機材費や税金を払うと、生活は極めて困窮します。
実家からの仕送りや、貯金を切り崩しながら働いている人がほとんど
というのが現実です。
• 中堅(原画マン)
年収 300万円~500万円
原画マンに昇格し
1カット(数千円~)単位で仕事が受けられるようになると
ようやく一般的な会社員と同等の収入が見えてきます。
• トップクラス(作画監督・有名アニメーター)
年収 800万円~1,500万円以上
作監クラスになり人気作品に引っ張りだこになれば
高収入を得ることも可能です。
しかし、これは、ほんの一握りの才能と努力の結晶です。
仕事のやりがいと大変なこと・厳しさ
やりがい
究極の「命を吹き込む」喜び
• 自分の「絵」が、動いた瞬間の感動
これが最大のやりがいです。
自分が描いたキャラクターがテレビ画面の中で
生き生きと動き、喋り、戦う。
その感動は、何物にも代えがたいものです。
• エンドロールに「自分」の名前が載る誇り
自分が関わった作品の最後に
スタッフとして自分の名前が流れた時の達成感。
• ファンの「神回だった」という熱狂
「今週の作画、すごかった!」
「あの戦闘シーンは神!」といった
ファンの熱狂を、自分が創り出したという実感。
大変なこと・厳しいこと・危険なこと
• 1. 圧倒的な「低賃金」と「不安定さ」
前述の通り、新人時代は「生活」ではなく「修行」です。
この数年間を耐えきれず、夢を諦める人が9割とも言われます。
• 2. 終わりなき「締め切り」という地獄
特にテレビアニメは、放送日が決まっています。
「間に合いません」は、絶対に許されません。
スタジオに泊まり込み数日徹夜することも日常茶飯事です。
• 3. 職業病という「危険」
物理的な危険はありませんが
健康面でのリスクが非常に高い仕事です。
• 腱鞘炎(けんしょうえん)
ペンを握り続けることによる、手首の故障。
これは「失業」に直結します。
• 腰痛・肩こり
一日中、同じ姿勢で机に向かい続けることによる、身体の故障。
• 精神的ストレス
締め切りと低賃金、睡眠不足による精神の消耗。
• 4. 報われない「地道さ」
自分が何時間もかけて描いた「動画」は
テレビではわずか0.5秒も映りません。
その報われなさ、地道さに耐える忍耐力が必要です。
あなたはどっち?
アニメーターに向いている人・向いていない人
【向いている人の特徴】
• 何よりもまず、「絵を描くこと」が、生きることそのものである人
• 「絵が上手い」ことより
「絵を動かすこと(アニメーション)」に
異常なまでの興味と探求心がある人
• 精神的・肉体的に極めてタフで
地道な反復作業に耐えられる「忍耐力」を持つ人
• 新人時代の「低賃金」を耐え抜く「覚悟」と
「経済的準備」がある人
• 協調性があり、チームで一つのものを作れる人
【向いていない人の特徴】
• 安定した収入や、カレンダー通りの休日を望む人
• 「アニメが好き」だが、「描くこと」自体はそこまで好きではない人
• 地道な作業や、ルーティンワークが嫌いな人
• 人からの批判(作監の修正)に、ひどく落ち込んでしまう人
• 体力に自信がない人
情熱とペン先から生み出される「絵」
アニメーターは、単なる「絵が好きな人」がなれる仕事ではありません。
それは、自らの肉体と生活を削り
「1秒24コマ」という瞬間に「命」を吹き込む
孤高の「職人」です。
その道は経済的にも、肉体的にも
数ある芸術の道の中で最も過酷なものの1つです。
しかし、自分の描いた線が
世界中の人々の「感動」になる。
その何物にも代えがたい喜びと誇りが
今日も彼らを過酷な机へと向かわせているのです。
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