脚本家の仕事とは?
年収・なり方から「書けない」地獄
最高のやりがいまで徹底解説!
映画、ドラマ、アニメ、舞台…。
私たちが心を奪われる物語の「設計図」を描き
キャラクターに命を吹き込む言葉を紡ぐ影の創造主。
それが「脚本家(シナリオライター)」です。
「自分の考えた物語で、世界を感動させたい」
「あの名作のような脚本を、いつか書いてみたい」
この記事は、[芸能・芸術の職業大全]の一部として
そんな「脚本家」という
最も孤独で、最も影響力のある仕事のひとつである職業のリアルを
その収入源から厳しい現実
そして何物にも代えがたいやりがいまで、徹底的に解剖します。
脚本家になるには?
必要な資格は?
A. 法律で定められた必須の国家資格や免許は
一切ありません。
究極的にはあなたの書いた物語(脚本)が
「面白い」と認められ
プロデューサーや監督が「映像化したい」と思い
それが作品として世に出れば、あなたはプロの脚本家です。
【「資格」より
「デビュー」と「実力」が全て】
プロとして活動するためには
まず「デビュー」の壁を突破し
継続的に「質の高い脚本を書き続ける」実力が不可欠です。
【プロになるための主なルート】
1. 新人賞への応募(王道ルート)
テレビ局や出版社、映画会社などが主催する脚本コンクール
(例:フジテレビヤングシナリオ大賞、城戸賞など)に応募し
大賞や優秀賞を受賞することで、デビューのチャンスを掴みます。
2. 脚本家養成スクールに通う
シナリオセンターや、映画監督・脚本家が主宰する
ワークショップなどで脚本の「型」や「技術」を学び
そこでの繋がり(コネクション)から、プロの道へ進むケースです。
3. 制作現場からの叩き上げ
助監督(AD)やアシスタントプロデューサー(AP)として
映像制作の現場で働きながら
自ら脚本を書き続け、監督やプロデューサーに
認められて脚本家になる道もあります。
具体的な仕事内容は?
「物語」という名の建築
脚本家の仕事は、パソコンに向かってただひたすら書くことではありません。
それは、ゼロから物語世界を構築し
それを映像(または舞台)で表現可能な形に落とし込む
緻密な「建築作業」です。
• 1. 企画・プロット作成
プロデューサーや監督と打ち合わせを重ね
「何をテーマにするか」
「どんな主人公にするか」
「物語のゴールはどこか」という
作品の「骨子(プロット)」を練り上げます。
• 2. 取材・リサーチ
リアリティを生み出すための地道な作業です。
舞台となる場所への取材、専門家へのインタビュー
膨大な資料の読み込みなど作品によっては数ヶ月、
数年単位で行うこともあります。
• 3. ハコ書き・構成
物語全体の流れを、シーンごとに「箱(ハコ)」のように区切り
起承転結や伏線などを配置していく
脚本の「設計図」作りです。
• 4. 執筆(第一稿)
キャラクターの台詞(セリフ)、行動(ト書き)
場面設定(柱書き)などを
脚本の形式に則って書き進めます。
• 5. 推敲・改稿(これが本番!)
脚本家の仕事の大部分は
実はこの「書き直し(リライト)」です。
担当編集者、プロデューサー、監督
時には主演俳優からの意見や要望を受け
「ここの台詞は響かない」
「この展開は無理がある」
といった厳しい指摘をもとに何度も何度も書き直します。
第一稿(初稿)がそのまま採用されることは、まずありません。
気になる給料・年収事情
この問いに答えるのは、最も困難です。
なぜなら、収入は「ほぼゼロから数億円」まで
天と地以上の差があるからです。
「脚本家として、専業で生活できている人は
ほんの一握り」
これが、まず知るべき厳しい現実です。
• 収入源の例
1. 原稿料(稿料)
脚本1本あたり、あるいは1話あたりで支払われる報酬。
新人賞受賞後のデビュー作などでは
非常に低い(数十万円程度)ことも珍しくありません。
連ドラ1話あたり数十万円~百万円以上と
キャリアや実績によって大きく変動します。
2. 印税(いんぜい)
自らが原作も兼ねる場合(オリジナル脚本など)で
DVD化されたり、ノベライズ本が出版されたりした際に
その売上に応じて支払われます。
3. 二次利用料
原作付きでない脚本の場合でも、再放送や配信
海外での放送などが行われた際に、規定の使用料が支払われます。
【収入の目安】
• 新人・若手:年収 ほぼゼロ ~ 300万円
コンクールで賞金を得ても、次の仕事がなければ収入は途絶えます。
アルバイトをしながら、次のチャンスを掴むために書き続ける
最も厳しい時期です。
• 中堅(連ドラをコンスタントに書けるレベル):年収500万円~2,000万円
テレビドラマや映画の脚本を、継続的に執筆できるようになると
安定した収入が見込めます。
• トップクラス(ヒットメーカー):年収 数千万円~数億円
社会現象になるようなヒット作を生み出せば
莫大な収入を得ることができます。
仕事のやりがいと大変なこと・厳しさ
やりがい
究極の「創造主」
• 自分の「物語」が、世界を動かす
自分の頭の中にしかなかった物語が
俳優の肉体、監督の映像、音楽の力などを得て
何百万人もの観客の心を揺さぶる。
この「創造主」としての喜びは、何物にも代えがたいものです。
• キャラクターが「生きている」と感じる瞬間
自分が生み出したキャラクターが
俳優の名演によって、脚本を超えた「生きた人間」として輝き出す。
その奇跡の瞬間に立ち会えること。
• 時代や社会を「映し出す」
自分の脚本を通じて、現代社会が抱える問題や
人々の普遍的な感情を描き出し
観客に「気づき」や「問い」を投げかけることができる。
大変なこと・厳しいこと・危険なこと
• 1. 終わりなき「生みの苦しみ」
これが最大の厳しさです。「書けない(スランプ)」という恐怖。
面白いアイデアが、何も思い浮かばない。
締め切りだけが迫ってくる焦燥感。
これは、精神的に非常に過酷です。
• 2. 孤独な戦いと「ダメ出し」地獄
執筆活動は、基本的にたった1人です。
そして書き上げたものはプロデューサーや監督から
容赦のない「ダメ出し(批判・修正要求)」を受けます。
自分の全てを否定されたかのような感覚に
何度も耐えうる強靭な精神力が必要です。
• 3. 経済的な不安定さ
「ヒットしなければ、次はない」という
常にキャリアの断絶と隣り合わせのプレッシャー。
• 4. 職業病という「危険」
物理的な危険はありませんが
健康面でのリスクが非常に高い仕事です。
• 腰痛・腱鞘炎(けんしょうえん)・眼精疲労
一日中、同じ姿勢でPCに向かい続けることによる、身体の故障。
• 精神的ストレス
締め切り、ダメ出し、スランプによる「うつ」。
あなたはどっち?
脚本家に向いている人・向いていない人
【向いている人の特徴】
• 何よりもまず、「物語」を考えること
書くことが、生きることそのものである人
• 人間と社会に対する
尽きない「好奇心」と「観察眼」を持つ人
• 精神的に極めてタフで、孤独を愛し
批判(ダメ出し)を成長の糧にできる人
• 地道な作業(リサーチ、改稿)を
コツコツと続けられる忍耐力がある人
• 自分の「表現」と、他者の「要求」のバランスを取れる
柔軟性を持つ人
【向いていない人の特徴】
• 安定した収入や、カレンダー通りの休日を望む人
• 「書く」ことより、「物語を読む(観る)」だけが好きな人
• 人からの批判(ダメ出し)に、ひどく落ち込んでしまう人
• 孤独が苦手で、常に人と関わっていたい人
• 「自分の書きたいものだけ」を書きたい人
(プロは、制約の中で最高のものを生み出す仕事)
「最初の設計図」を描く
脚本家は、単なる「物語を作る人」ではありません。
それは時代の空気を読み、人間の本質を深く洞察し
何百人ものプロフェッショナルを動かす「最初の設計図」を描く
孤独な建築家です。
その道は、99%の苦しみと、1%の歓喜でできている
と言っても過言ではありません。
しかし、その1%の歓喜すなわち「自分の言葉で、世界を感動させた」
という瞬間の喜びが
他の全てを凌駕するほどの魅力を持っているからこそ
今日も多くの人が、その険しい「書く」という道を選び続けているのです。
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