スタイリストの仕事とは?
年収・なり方から「キツい」激務
地獄のアシスタント時代まで徹底解説!
雑誌の表紙、テレビCM、ドラマで輝く俳優、ステージで歌うアーティスト。
その「ビジュアル(見た目)」を
洋服やアクセサリーという「道具」を使って完璧に演出し
その人の魅力や、作品の世界観を最大限に引き出す美の仕掛人。
それが「スタイリスト」です。
「洋服が大好き」
「芸能界で働きたい」
「おしゃれで華やか」
そんなイメージとは裏腹に
その仕事は「芸能界で最も体力勝負な裏方」とも呼ばれる
地道で、過酷な激務の世界です。
この記事は、[芸能・芸術の職業大全]の一部として
そんな「スタイリスト」という仕事のリアルを
その収入源から厳しい現実
そして何物にも代えがたいやりがいまで、徹底的に解剖します。
スタイリストになるには?必要な資格は?
A. 法律で定められた必須の国家資格や免許は
一切ありません。
しかし、「資格」以上に
この業界でプロとして認められるための
ほぼ唯一の「王道ルート」が存在します。
【「資格」より「師弟関係」が全て】
プロとして活動するためには
まず「プロのスタイリストのアシスタントになる」ことが
事実上のスタートラインです。
【プロになるための主なルート】
1. 服飾系の専門学校・大学で学ぶ
文化服装学院やモード学園といった専門学校で
デザイン、パターン、縫製、ファッション史といった
服に関する専門知識と技術を体系的に学びます。
2. プロのスタイリストに「弟子入り(アシスタント)」する
これが、この仕事の最大の「関門」です。
学校の紹介や、自ら履歴書を送るなどして
尊敬するスタイリストの事務所に入り
無給(または薄給)のアシスタントとして、師匠のすべてを学びます。
3. 独立する
数年間(3年~5年が一般的)の過酷なアシスタント業を耐え抜き
師匠から「独立」を認められて
ようやく一人前のスタイリストとして活動できます。
具体的な仕事内容は?
「選ぶ」だけではない、裏方業
スタイリストの仕事は
アトリエで優雅に服を選ぶことではありません。
それは「①営業」「②肉体労働」「③管理」「④本番」の連続です。
• 1. 打ち合わせ(営業・企画)
監督、編集者、クライアントと打ち合わせをし
「今回のテーマは?」「モデルの個性は?」
「何を一番魅力的に見せたいか」という
企画の意図を完璧に理解します。
• 2. リース(借り出し)
これが仕事の7割を占める「肉体労働」です。
打ち合わせに基づき
各ブランドのプレスルーム(ショールーム)を
一日中駆けずり回り、何十、時には何百
というアイテム(服、靴、アクセサリー)を借り集めます。
• 重さ
リースバッグ(通称:箱)は、1つ何十キロにもなります。
• 人脈
人気ブランドの服を借りるためには
プレス担当者との日頃からの
良好な人間関係(コネクション)が不可欠です。
• 3. スタイリング(創造)
借り集めた膨大な服を、アトリエで組み合わせ
その日の撮影で使うコーディネートを何パターンも組み上げます。
• 4. 撮影・現場立ち会い(本番)
撮影現場に同行。
モデルやタレントが着替えるのを手伝い
シワひとつないようアイロンをかけ
カメラの前で服が最も美しく見えるよう
ピンで留めたり、テープで貼ったりと、ミリ単位の調整を続けます。
• 5. 返却・精算(管理)
撮影が終われば、息つく暇もありません。
借りた何百ものアイテムを
借りた時と全く同じ状態(畳み、アイロン、タグ付け)にして
プレスルームに「返却」して回ります。
同時に、リース料や経費の精算も行います。
気になる給料・年収事情
この問いに答えるのは、最も困難です。
なぜなら、収入は「ほぼゼロから数千万円」まで
天と地以上の差があるからです。
• 収入源:「ギャランティ(報酬)制」
雑誌1ページ、CM1本、タレント1人あたり、という単価で仕事を受けます。
【収入の目安】
• アシスタント時代
年収 ほぼゼロ ~ 100万円
これが、この仕事の最大の「壁」です。
「師匠」のアシスタントは、「給料」ではなく
「お小遣い(月数万円)」か
「無給」であることも珍しくありません。
生活は、ほぼ100%アルバイトとの両立です。
この下積み時代を耐えきれず、辞めていく人が9割とも言われます。
• 独立・若手
年収200万円~400万円
独立直後は、師匠から仕事をもらいながら
自分で営業し、少しずつ実績を積んでいく時期。
• 中堅(雑誌・芸能事務所と契約)
年収500万円~1,000万円
「この雑誌の、この企画は〇〇さん」と
指名で仕事が来るようになると、収入は安定します。
• トップクラス(有名タレント専属)
年収 数千万円
CMや広告を何本も手掛けるトップスタイリストになれば
収入は青天井です。
仕事のやりがいと大変なこと・厳しさ
やりがい
究極の「ビジュアル・プロデュース」
• 自分の「感性」が、世に出る喜び
自分が組んだスタイリングが、雑誌の表紙やCMとなり、日本中の人の目に触れる。その達成感は、何物にも代えがたいものです。
• 「服の力」で、人を輝かせられる
自分のスタイリングによって、モデルや俳優が「役」に入り込み、その人が持つ魅力を120%引き出せた瞬間。
• チームで「作品」を創り上げる達成感
カメラマン、ヘアメイク、監督…多くのプロフェッショナルと力を合わせ、一つの作品(ビジュアル)を創り上げた時の喜び。
大変なこと・厳しいこと・危険なこと
• 1. 圧倒的な「肉体労働」(きつい)
「スタイリストは、体力勝負」
これが最大の厳しさです。
何十キロもある荷物を抱えて
雨の日も雪の日も、ヒールで走り回ります。
体力に自信がなければ、スタートラインにすら立てません。
• 2. 終わりなき「時間外労働」(厳しい)
「早朝・深夜」が当たり前。
ロケの入り時間は早朝4時
返却作業が終わるのは深夜2時ということも日常茶飯事。
プライベートな時間は、ほぼないと考えた方が良いでしょう。
• 3. プレッシャーと「危険」
これが最大の「危険」です。
• 汚損・紛失のリスク
借りた服は、一点何十万円、何百万円もする超高級品。
それを撮影中に汚したり、返却時に失くしたりすれば
全額「弁償」です。これが原因で、キャリアが終わることもあります。
• 人間関係
師匠との厳格な「師弟関係」、気難しいタレント
要求の厳しいクライアントとの板挟みになる、精神的なタフさが求められます。
あなたはどっち?
スタイリストに向いている人・向いていない人
【向いている人の特徴】
• 何よりもまず、「体力」と「精神力」に絶対の自信がある人
• 「華やかな世界」への憧れより
「裏方」として人を支えることに喜びを感じる人
• 「洋服」が、異常なまでに好きな人
(着るだけでなく、構造や歴史まで)
• 「気が利く」のが得意で
常に二手三手先を読んで行動できる人(段取り力)
• 地道な作業(アイロンがけ、梱包)を
コツコツと続けられる忍耐力がある人
【向いていない人の特徴】
• 安定した収入や、カレンダー通りの休日を望む人
• 体力に自信がない人、潔癖症の人
• 地道な作業や、裏方仕事が嫌いな人
• 「自分が目立ちたい」「自分が服を着たい」人(モデル向き)
• 「弁償」のリスクや、プレッシャーに耐えられない人
美の仕掛人
スタイリストは、単なる「おしゃれな人」ではありません。
それは、芸術家としての「感性」と
職人としての「管理能力」
そして何より現場を支えきる「屈強な肉体」を兼ね備えた
誇り高き「裏方」です。
その道は、99%の地道な努力と、1%のスポットライトでできています。
しかし、その1%の輝きすなわち
「自分の手で、最高のビジュアルを創り上げた」という瞬間の喜びが
他の全てを凌駕するほどの魅力を持っているからこそ
今日も多くの人が、その重いリースバッグを抱えて走り続けているのです。
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