ひよこ鑑定士の仕事とは?
年収1000万も?謎多き専門職のリアルを徹底解説!
「ひよこ鑑定士」
その名前を聞いて、「ひよこのオスとメスを見分ける仕事?」
となんとなく想像はできても具体的に何のためにどのように行っているのか
そしてどれほどの専門性が求められるのかを知る人は少ないでしょう。
オスは美味しい唐揚げ…メスは産卵があり、それぞれ異なる飼育方法になるため、ひよこの状態から性別を把握している必要があります。
実はこの仕事 正式名称を「初生雛鑑別師(しょせいひなかんべつし)」と言い
日本の養鶏業、ひいては世界の食卓を支える極めて重要な役割を担う
「匠の職人」なのです。
この記事では、そんなひよこ鑑定士の仕事のリアルを徹底的に解剖します。
具体的な仕事内容から、必要な資格
そして「高給取り」とも噂される給料事情まで、その奥深い世界へご案内します。
具体的にどのような仕事? なぜ必要なのか?
ひよこ鑑定士の主な仕事は、その名の通り
孵化したばかりのひよこのオスとメスを、瞬時にそして正確に選別することです。
ではなぜ生まれたばかりのひよこを急いでオスとメスに分ける必要があるのでしょうか。
それには現代の養鶏業における、非常に重要な経済的理由があります。
• 卵を産むための鶏(採卵鶏)の場合
当然ながら、卵を産むのはメスだけです。
オスを育ててもエサ代などのコストがかかるだけなので
卵を産むメスだけを選別し育てる必要があります。
• お肉になるための鶏(肉用鶏/ブロイラー)の場合
オスもメスも両方育てますが、成長のスピードが異なるため
オスとメスを分けて飼育した方がエサの管理などが効率的になり
品質も均一になります。
この選別を、外見で違いがわかるようになるまで数週間も待っていたら
その間のエサ代や管理コストは莫大なものになります。
そこで、孵化してすぐの「初生雛」の段階で
専門家が迅速に選別する必要があるのです。
求められる驚異的なスキル
熟練の鑑定士は、1羽あたりわずか1~2秒
1時間で800羽~1,200羽ものひよこを、99%以上の驚異的な精度で見分けます。
その主な方法は日本で開発された「肛門鑑別法」という
ひよこの総排泄腔(肛門)を指でそっと開き
内部にある微細な生殖突起の有無や形状を一瞬で見極める まさに神業です。
資格は必要? ひよこ鑑定士になるには
Q. 資格は必要? なくても仕事はできる?
A. 必須です。資格がなければ、この仕事をすることはできません。
ひよこ鑑定士(初生雛鑑別師)は、誰でも名乗れるものではなく
公益社団法人畜産技術協会が認定する非常に専門性の高い資格です。
ひよこ鑑定士になるための険しい道のり
1. 養成所への入所
まず畜産技術協会が運営する「初生雛鑑別師養成所」に入所しなければなりません。入所試験には「満25歳以下、高校卒業以上、視力1.0以上(矯正可)」
といった条件があり、筆記試験や面接が行われます。
2. 厳しい養成講習
入所後は約5ヶ月間の養成講習で鑑別の理論と技術
養鶏に関する知識を徹底的に学びます。
この講習についていけず途中で断念する人も少なくありません。
3. 実地研修と最終試験
講習を終えた後、鑑別研修生として実際の孵化場(ふかじょう)で
1〜2年の実地研修を積みます。
そして最終関門である「高等鑑別師考査」という試験に合格して
初めて「初生雛鑑別師」として認定されます。
養成所に入所してから最終的に資格を取得できるのは約半数とも言われる狭き門です。
仕事の大変なところ
• 極度の集中力と体力
1日中ほぼ同じ姿勢で何千、何万羽というひよこを鑑別し続けます。
瞬きの間に次のひよこを手に取るようなスピードで
100%に近い精度を維持し続けるため、凄まじい集中力と
それを支える体力・精神力が求められます。
• 常に孤独な作業
鑑別は、基本的に1人で黙々と行う作業です。
同僚と会話をすることはほとんどなく
自分自身の技術と感覚だけが頼りとなります。
• 命を扱うことのプレッシャー
ひよこは非常にデリケートな生き物です。
傷つけないよう、細心の注意を払って優しく
しかし素早く扱わなければなりません。
また、産業動物の宿命として不要と判断されたオスが殺処分される
現実に日々向き合う精神的な負担もあります。
気になる給料・年収事情
ひよこ鑑定士の給与体系は、一般的な月給制とは異なり、「歩合制」が基本です。
• 給与の仕組み
鑑別したひよこ1羽あたり4円~5円が報酬となります。
• 平均年収:500万円~600万円
日本の平均年収を大きく上回る水準です。これは、ひよこ鑑定士が世界的に不足しており、その高い専門性が評価されているためです。
• トップクラスの鑑定士
技術を極め圧倒的なスピードと正確性を両立できる
トップクラスの鑑定士や、需要の高い海外(特にヨーロッパなど)で
活躍する鑑定士の中には年収1,000万円以上を稼ぐ人もいます。
まさに、腕一本で世界を渡り歩ける仕事と言えるでしょう。
あなたは当てはまる?ひよこ鑑定士に向いている人
• 集中力と忍耐力が人並外れて高い人
長時間、単調な作業を続けても
集中力を切らさずに最高のパフォーマンスを維持できること。
これが最も重要な資質です。
• 手先が器用で、感覚が鋭い人
小さく繊細なひよこを優しく、かつ素早く扱える器用さが求められます。
また指先の微細な感覚で違いを見抜く能力も必要です。
• 探求心と向上心がある人
「同じひよこは二羽いない」と言われるほど鑑別は奥が深い世界です。
常に自分の技術に満足せず より高みを目指せる向上心が不可欠です。
• 自己管理能力が高い人
体調や精神状態が直接パフォーマンスに影響します。
常に最高の状態で仕事に臨むためのストイックな自己管理能力が求められます。
面白いことに手が小さい人の方がひよこを扱いやすく有利だと言われています。
日本が産んだ世界の食卓を支える匠の職人
「ひよこ鑑定士」は、そのユニークな名前からは想像もつかないほど
ストイックで、高い技術と精神力が求められる、孤高の専門職です。
その道は険しく、誰もがなれるわけではありません。
しかし、一度技術を身につければ年齢に関係なく
日本国内はもちろん世界を舞台に活躍できる大きな可能性を秘めています。
何よりも、私たちの食生活に欠かせない卵やお肉が
安定して供給されるための根幹を支えているという
静かな誇りに満ちた仕事です。
もしあなたが、一つの道を極める職人の世界に興味があるなら
この奥深い仕事の扉を叩いてみてはいかがでしょうか。
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