板前の仕事とは?
厳しい修行のリアルと年収
やりがいを徹底解説!
磨き抜かれた檜のカウンターの内側で柳刃包丁を鮮やかに操る。
その無駄のない所作と真剣な眼差しは、見る者を魅了し
これから提供される一皿への期待感を極限まで高めてくれます。
「板前」は、単なる料理人ではありません。
それは、日本の食文化の伝統と技を継承し、食材の命と向き合い
お客様をもてなす「和食の芸術家」とも言える存在です。
しかし、その華やかな「花板(はないた)」と呼ばれる姿の裏には
「追い回し」から始まる、長く、厳しい修行の道が横たわっています。
この記事では、そんな板前の仕事のリアルを徹底的に解剖します。
具体的な仕事内容は?
厳しい階級社会で技を磨く
板前の世界は、「徒弟(とてい)制度」という
厳格な階級社会で成り立っています。
新人がいきなり魚を捌いたり
カウンターに立ったりすることは絶対にありません。
「串打ち3年、焼き一生」という言葉に象徴されるように
ひとつの持ち場を何年もかけて極め、少しずつ昇格していくのです。
1. 追い回し(おいまわし)
全ての板前が、この最も下の立場からキャリアをスタートします。
• 仕事内容:
皿洗いや鍋磨き、厨房の掃除、先輩たちの雑用、出前の配達など。
食材に触ることは、ほとんど許されません。
• 目的:
厨房の衛生管理の基本を体に叩き込むと同時に
先輩たちの仕事を見て学び、礼儀作法や精神力を鍛える最も重要な期間です。
2. 焼き方(やきかた)
魚の塩焼きや田楽など、焼き物全般を担当します。
炭火の扱いから、最適な火加減を見極める技術まで
非常に奥が深い持ち場です。
3. 揚げ方(あげかた)
天ぷらなどを担当します。最高の状態で揚げるためには
食材の水分量や、衣の状態、油の温度などを瞬時に見極める
繊細な感覚が求められます。
4. 煮方(にかた)・椀方(わんかた)
煮物やお吸い物など、店の「味の要」となる出汁(だし)を扱う
非常に重要なポジションです。
店の味の評価を決定づけるため、優れた味覚と経験が求められます。
5. 脇板(わきいた)
いよいよカウンターの中
親方(花板)の隣に立つことを許されるポジションです。
• 仕事内容:
野菜を切る「剥き物(むきもの)」や、魚を捌く
シャリを炊くなど、親方の補助的な調理を行います。
6. 花板(はないた)
店の全てを統括する、板前の最高位です。
カウンターの真ん中に立ち、お客様の前で刺身を引くなど
店の「顔」としての役割を担います。
メニューの考案、食材の仕入れ、後進の指導など、その責任は絶大です。
仕事の大変なこと・厳しさ・危険性
• 長時間労働と厳しい上下関係:
朝早くからの市場での仕入れに始まり
夜遅くの片付けまで労働時間は非常に長いです。
休日は週に1日が一般的で、プライベートな時間はほとんどありません。
また体育会系さながらの厳しい上下関係もこの世界の伝統です。
• 「見て盗め」の文化:
先輩は手取り足取り丁寧に教えてはくれません。
先輩の技術を、目で見て、体で覚え、盗むのが基本。
何度も失敗を繰り返しながら
自分のものにしていく、強い意志と忍耐力が求められます。
• 危険との隣り合わせ:
板前が使う「包丁」は、カミソリのように鋭利な刃物です。
一瞬の気の緩みが、指を落とすような大怪我に繋がります。
また、「焼き場」や「揚げ場」では、火傷のリスクも常に伴います。
気になる給料・年収事情
板前の収入は、その階級とスキルに完全に連動しています。
• 見習い期間(追い回し):
年収200万円~300万円
「給料」というよりは、住み込みで食事付きの「お小遣い」程度という店も少なくありません。厳しい下積み時代です。
• 中堅クラス(煮方・脇板など):
年収400万円~600万円
一人前に仕事を任されるようになると、収入も安定してきます。
• 花板(料理長)クラス:
年収800万円~1,500万円以上
有名料亭の料理長や、自分のお店を持って成功すれば
収入は大きく上がります。
実力次第で、どこまでも高みを目指せる世界です。
必要な資格は?どんな人が向いているの?
必要な資格は?
A. 「板前免許」という資格はありません。
しかし、実質的に「調理師免許」は必須です。
板前として働くために法律で定められた資格はありませんが
プロの料理人としての知識(特に衛生管理)を証明する
「調理師免許(国家資格)」の取得は、ほぼ必須条件です。
また、自分のお店を開く際には、この調理師免許が必要となります。
あなたはどっち?
板前に向いている人・向いていない人
• 【向いている人の特徴】
• 心身ともにタフで、何よりも忍耐強い人
• 探求心が強く、常に上を目指す向上心がある人
• 伝統や文化を重んじ、礼儀作法を大切にできる人
• 手先が器用で、味覚や美的センスが鋭い人
• 「美味しい」で人を喜ばせることに、至上の喜びを感じる人
• 【向いていない人の特徴】
• 短期間で成果を求め、すぐに認められたい人
• 厳しい上下関係や、体育会系の文化が苦手な人
• 体力に自信がない、休みをしっかり取りたい人
• 自分のやり方(我流)にこだわりたい人
厳しい修行の先に待つ伝統とおもてなしの技術
板前への道は華やかな料理の世界とは裏腹に、長く地道で厳しい修行の連続です。
それは単なる料理の技術を学ぶだけでなく
礼儀作法、もてなしの心、そして食材の命への感謝といった
「道」を極めるに等しい道のりです。
しかし、その厳しい坂を登り切った者だけが見ることのできる景色があります。
自らの手が生み出した一皿で、お客様を感動させ、「美味しかった」
という最高の言葉をいただく。
そして日本の美しい食文化を、次の世代へと繋いでいく。
もしあなたがその尊い役割を担う覚悟と料理への尽きない情熱を持っているなら
板前という仕事は、あなたの人生を懸けるに値する
最も挑戦しがいのある、誇り高いキャリアとなるでしょう。
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